71歳の女性。
3ヶ月前に、虫歯になった左下3に痛みが出てきたため、かかりつけ医にて抜髄処置
を行うことになったそうです。
( マイクロスコープによる精密根管治療をされている先生ということでしたが )
2回根管治療を行い
「探したけれど根管が見つからないから、この歯は抜歯になるかもしれない。」
と言われたということでした。
その後、歯肉の腫脹や 咬合時の痛みが続いていましたが、
”どうしても歯を抜きたくない!残す方法はないだろうか?”と思い、ご友人の紹介で
来院されました。
左下3には打診痛を認めており、歯肉に腫脹も見られました。
初診時のデンタルがこちら
根管口探索のために、歯質が過剰に削られてしまっています。
歯髄診査の結果がこちら
左下3の診断名
Pulpal Dx : previously initiated therapy
Periapical Dx : Symptomatic apical periodontitis
左下1、2と同様に、根管口部に石灰化が起こっていた可能性はありますが、
歯軸の方向を確認し、歯根の中央付近に根管口があることから探索はそう困難ではない
はずと思い、治療開始。実際予測した位置に根管口は存在していました。
ファイルを試適し穿通確認。
この日はロータリーファイルで形成、拡大まで行い水酸化カルシウムを貼薬しました。
2回目、痛みや腫れといった症状は消失していたので、根管充填まで行いました。
こちらは根管充填後、仮歯が入っている状態のレントゲン写真です。
根の先から少し出ているのは、根充に使用したバイオセラミックシーラーです。
根充から3ヶ月後の経過写真になりますが、根尖透過像は消失しており
症状も認めず、予後は良好です。
こちらは1年半経過後のレントゲン写真。
症状もなく、透過像も消失し、治癒しているのがわかります。
高齢になると髄腔( 神経や血管の入っている空間 )は狭窄し、根管口を探すのは
困難になる場合があります。
まずは歯種による解剖学的特徴、レントゲン上での髄腔までの距離の計測等
基本的事項をよく把握しておく必要があります。
マイクロスコープはあくまで補助的な道具にすぎず、それがあるからといって治療
の成功につながるわけではないということです。