こちらが意図的再植前の、術前のデンタル写真です。
7番は意図的再植に適した歯かというと、そういうわけではありません。
意図的再植においては通常の抜歯と違い、いかに破折させずに安全に抜歯できるかと
いう点が非常に重要なポイントです。
そこには歯根の形状というのも大きく関わってきます。
歯根が単根もしくは、複根でも離開が少ないものの方が、抜歯時の破折のリスクは
小さくなります。
そしてもう一つ骨吸収の程度というのも抜歯しやすさに関わってくると考えられます。
炎症性骨吸収により歯根周囲の骨が少なければ歯は当然抜けやすくなります。
この歯は3根で離開がないとは言えないのですが、上顎なので骨密度は下顎に比べれば
低く、透過像も大きいため、適応症ではないものの、慎重に抜歯を行えばリスクは
軽減できるのではないかと判断しました。
※以下手術写真になります。気分を害する方は閲覧を
お控えください。
抜歯は20分程度と思ったよりもスムーズに抜けました。
意図的再植時の抜歯においては、通常の鉗子を使用すると滑りやすく、歯根表面の
組織( 歯根膜 )を損傷してしまう可能性があるため下の写真のような滑り止め防止加工
のされたダイヤモンド鉗子を使用し、慎重に行っていきます。
さあ抜歯してからは時間勝負になります。
Andreasen(1981)によると、歯根膜が口腔外におかれた時間とその生存率を調べた
ところ、乾燥状態では18分、生理食塩水にて湿潤状態を保てれば60分ほどである
ことが報告されており、一応安全域として20分ですべての口腔外での作業を終わら
せ、歯を抜歯窩へ戻すように行っています。
歯根周囲の肉芽をピンセットで除去し、歯根全体に破折や側枝がないか観察を
行います。
メチレンブルーという青色の染色液を使用しています。
そして歯根先端3mm程度を切除、逆形成、逆充填を行っていきます。
このケースではMTAセメントを使用しています。
そして歯を口腔内に戻して縫合し、デンタル撮影を行いました。
P根の先端のMTAが少し削れたように写っていますが、、、問題ないと判断しました。
対合歯と咬合させないようにTEKを調整しこの日は終了しました。
2ヶ月後の経過観察時のレントゲン写真になります。
症状は消失し、透過像も薄くなってきたように見えます。
炎症性、置換性吸収の兆候も見られません。
再植歯の歯根膜の治癒がおこるまで約2ヶ月ほどかかるとされていますが、この時点
においては、治癒の兆候が見られると判断しました。
その後、この方は県外に転勤されたため、67の最終補綴は紹介先で行って
もらいました。
その後、1年9ヶ月後になりますが、ちょうどこちらに寄る機会があったということ
で、経過観察を行うことができました。
症状は全くないとのことで、レントゲン写真においても透過像は見られず、歯根周囲に
は歯根膜腔らしきものも認められます。
今後の経過観察については、知り合いの歯内療法専門医の先生にお願いしようと
思っています。
また6番についても、透過像も消失し良好な予後が確認できました。
わざわざ遠方から寄って下さったので、良い報告ができてよかったです!