えびす歯科副院長の歯内療法のブログ

歯内療法を専門にしている歯医者です

上顎洞に近接した歯の歯根端切除術

33歳女性、右上6番に咬合時の疼痛を認めていました。

歯内療法学的な診査の結果がこちらになります

打診痛、そして割り箸を噛んでもらった時に疼痛を認めました。

デンタル写真がこちら

P根には比較的太いメタルポストらしきものが入っているのがみられます。

根尖には3根とも透過像があるように見えますが、上顎洞等との重複により視認

しにくいため、CT撮影も行いました。

上顎洞粘膜には肥厚がみられます。

右側のみ後鼻漏など鼻症状を認めており、耳鼻科に通院されているということでした。

MB根周囲には透過像を認めており、冠状断面を見ると根尖付近は上顎洞と交通して

おり、また未処置の根管( MB2 )がありそうです。

 

歯内療法学的診断名としては

 Pulpal Dx : Previously Treated

 Periapical Dx : Symptomatic apical periodontitis

 

まずは再根管治療を行うことになりました。

根管治療後のデンタルがこちら

イスムス状のMB2は形成していくとMB1と合流しました。

ですが湾曲の手前までしか器具は挿入できませんでした。

P根の形成時に、根尖の湾曲部分にてファイルが破折してしまいましたが、新品の

ファイルを使用しており、形成の後半であったため、そのまま根管充填を行い

経過観察していくこととしました。

3ヶ月ほど経過観察を行いましたが、やはり咬合時の疼痛、そして打診痛を認めて

いました。

3ヶ月経過観察時のデンタルがこちら

CT写真がこちら

症状は認めるも、治療前に見られた上顎洞内の不透過像はきれいに消失しています。

透過像を認めているのはMB根とP根でした。

この場合、外科的歯内療法として通常であれば歯根端切除術を検討していきますが、

P根は上顎洞に突出しており、周囲に骨がないため根切は難しいと思われます。

まずはMB根の根切を行い、その後P根の透過像が増大もしくは臨床症状を引き起こして

きた場合には、意図的再植を検討することにしました。

 

 

 

 

 

 

※以下手術写真になります。気分を害する方は閲覧を

お控えください。

 

 

 

 

 

 

切開、剥離

歯根端切除

上顎洞に交通している部分の切除を回避するため、通常であれば3mm程度の切除になり

ますがこの場合は5mmほど根尖を切除しました。

 逆形成、逆根充

縫合 

抜糸時

3ヶ月経過観察時には、打診痛、咬合痛ともに消失し、デンタルにおいても

MB、P根ともに透過像は薄くなり、治癒傾向にあると思われます。

今後も続けて経過観察を行なっていく予定です。