41歳男性の患者さんです。
主訴は、”右下奥歯を何度も治療をしているが、腫れてくる。
先生は、免疫が原因だと言って取り合ってくれない”という事でした。
”何度も治療した”、というのはよくお話を伺うと、再根管治療をして治らなかったの
で、歯根端切除術をおこなった、という意味でした。
右下6番にサイナストラクト(排膿路)ができています。
歯肉に手術の跡も見られます。
近心根に透過像をみとめ、根管充填の密度も粗であるように見えます。
近心根は根尖を切除しているようですが、逆根充はされていないようです。
根管治療はラバーダムはせずにおこなった、とのこと。
患者さんは再手術が必要だと考えられていたようですが、歯を破折させる危険性のある
ような大きな土台も入っておらず、再治療によって根管治療の質を上げることが可能
だと思われたのでまずは再根管治療を行うことにしました。
クラウンとファイバーポストを除去すると歯質が検知液で赤く染まりました。
染色部分は虫歯の残存を示しており、細菌が根管内に多く残っているということに
なります。
根管充填、歯台築造までおこなったレントゲン写真。
近心根はMTAセメントで根管充填しています。
この時点ではサイナストラクトは消失していました。
クラウンを装着し、半年度のレントゲン。
近心根の根尖透過像もなくなり、臨床症状もなく治癒は良好です。
現在3年経過しましたが、経過は良好です。
無菌的処置が行われていない、また解剖学的理解がなく行われた根管治療は、
歯質を削り、破折リスクを高めているだけだといえます。
手術で根の先を切除しても、当然解決にはなりません。
コンセプトを守り、適切に再根管治療を行うことで治癒したケースでした。